晴釣雨読

As the train goes through the mountain path, leaning on the lightcyan window, only I would think about my fun.

ああ彼女は運が悪い。

この何気ない噂話のどこが琴線かって、それは2つの略語の認知度の差でしかない。ひとつ、キムタクと言えば彼であり、彼と言えばキムタクである。しかし二つ目の、アメスクって何?
アメフトなら大抵の日本人は理解できるだろう。本場ではいかにちんぷんかんぷんであってもバカにされても、日本でアメリカンフットボールと言えば、アメフトでいい。
でも「アメスク」という略称の認知度はどうだ?アメリカンスクールに日米混血児の子を通わせる日本人同士でなら通じるかもしれないが、実際そんな日本人の親達はアメスクとは言わないでASIJと言う。
こうやって、人に会話をしかけてきたくせにその相手に故意に疑問を生じさせる話法が、あたしは大嫌いだ。偶然なはずがない、略語なんだから。自分が知った時と同様に、アメリカンスクールと言えば済むところを故意に略して慣れた響きを演出するところが、狡猾で意地汚い。
「わからなければお尋ねなさいよ。教えてあげるわよ」という、相手の知らないことをわざわざふっかけてわざわざ質問させて、親切に教えてあげる自分を演出する奴は過去にも1人ほどいたが、この阿呆には他にも散々な目にあって鬱の病み上がりの神経をしこたま踏みしだかれたあたしは、その阿呆に限らずこういう話法そのものが大嫌いであり、こういう話法を採択している女も大嫌いだ。
もしあたしがその単語の意味するところを知っていたとしても、そういう輩の質問強要話法に出会ったときは必ず、「どういう意味?」「どうして知ってるの?」「それって何のこと?」と絡んでやることに決めていた。決めていたはずが、だ。